テレワークと出社が共存する現代、オフィスは「わざわざ行きたくなる目的地」への変化が求められています。その鍵の一つが、視覚的にも心理的にも効果を発揮する観葉植物です。本記事では、導入メリットの整理から選定・配置・コスト管理、PDCA運用までを網羅。総務担当者が迷わず移転計画やフリーアドレス設計を進められる具体策を、最新事例とデータを交えてお届けします。
目次
観葉植物を導入するメリット
観葉植物を取り入れることで得られる効果は、単なる“癒やし”にとどまりません。集中力向上や作業効率アップ、さらにはコミュニケーション活性化まで、ビジネスと従業員双方にプラスをもたらします。この章では、とくに総務が経営層に説明するとき説得材料になるメリットを整理します。各メリットの裏付けとなる国内外の研究データを示し、効果測定のヒントも紹介するので、社内稟議書作成にもそのまま活用できます。まずは健康面と心理面から見ていきましょう。
空気清浄・ストレス低減など健康面の効果
NASAの室内空気浄化研究ではサンセベリアやポトスがホルムアルデヒド等を吸着する能力を示しました(NASA 1993)。さらに英国エクセター大学の実験では緑量を増やしたオフィスで心拍変動が改善し、生産性が15%向上しています(THE OWNER 記事)。
社員同士の会話を生む「バイオフィリックデザイン」の心理学
バイオフィリックデザインとは、人が本能的に自然を求める性質(バイオフィリア)を空間に取り込む設計手法です。世界16か国・1万4千人を対象にした「Human Spaces」調査では、窓から緑が見える職場で創造性が15%、幸福度が6%向上しました(Interface PDF)。植物が視線を和らげ、動線のハブになることで立ち話が生まれ、部署横断のコラボレーションも促進します。
以上のように、観葉植物は健康面・心理面など様々な効果が期待できます。次章では実際の導入で失敗しないための植物選定の具体策を紹介します。
失敗しない植物選定リスト【枯れにくい・育てやすい・人気種】
せっかく導入したグリーンが枯れては、視覚的価値だけでなく“管理コスト”も大幅に増えます。この章では、総務が初心者でも扱いやすく、年間を通じて安定した見た目を保てる種類をサイズ別に紹介します。加えて、来訪者の印象を損なわないフェイクグリーンの選定基準と、リアルグリーンとの混在配置によるコスト最適化方法も解説します。
卓上~大型までサイズ別おすすめ
卓上サイズ:ハオルチア 〈多肉植物〉、ポニーテール(トックリラン)、スパティフィラム
中型サイズ:サンスベリア(トラノオ)、パキラ、テーブルヤシ
大型サイズ(1.8 m超):フィカス・アルテシマ、ドラセナ・マッサンギアナ、カシワバゴム、ウンベラータ
※水やり頻度は環境で異なりますが、目安は春〜秋:週1回/冬:2週に1回。必ず土の乾き具合で調整してください。
フェイクグリーンを上手に取り入れる判断基準
- ● 防炎認定タグ付き
- ● 葉の色にグラデーションがある
- ● 幹部分に天然木を使用している
人の出入りが少なく日照も換気も不足しがちなバックヤードや、消防法上の制限がある避難経路沿いにはフェイクグリーンが有効。リアルグリーンと交互に配置すると遠目に違和感がないうえ、交換サイクルが読めるため長期コストを圧縮できます。
サブスク・レンタル vs 購入 コストと管理の比較リスト

導入形態によって初期費用とランニングコストは大きく変わります。月額サブスクやリースは専門スタッフのメンテ込みで手間を削減できる反面、長期で見れば所有コストが割高になることも。購入は自由度が高い一方で、水やり・剪定・病害虫対策の工数が総務に集中しがちです。本章では、費用総額シミュレーションと勘定科目別の会計処理まで網羅して比較します。
月額リース料金の目安と経費・勘定科目の扱い
一般的なリース相場は大型鉢で月額3,000〜5,000円(メンテ込み)。
通常のオフィスグリーンリースは多くの場合オペレーティング・リースに該当し、リース料として経費処理が可能ですが、契約形態や期間によっては資産計上となるケースもあるため、必ず税理士に確認してください。 植物を購入する場合、取得価額10万円未満であっても「少額減価償却資産の特例」適用可否により処理が変わるため、社内の会計方針と突き合わせが必要です。
自社管理で押さえるべき水やり・害虫対策チェックリスト
- ● 土の表面が乾いたら鉢底から流れるまで水やりし、受け皿の水は必ず捨てる。
- ● 週1回、葉裏を濡れた布で拭きハダニを予防。
- ● コバエが発生したら表土を3cm入れ替える。
- ● 殺虫剤はオルトラン粒剤を規定量散布。
森トラスト本社に見る植栽を活用した「Destination × Agile Office」の実践
ここからは、実際に観葉植物を活用してオフィス環境を最適化した事例を見てみましょう。
2023 年 5 月 10 日、森トラスト株式会社は「東京ワールドゲート 神谷町トラストタワー」へ本社を移転しました。新オフィスは、自社が掲げる 「DESTINATION OFFICE」 ビジョンを体現し、ABW(Activity Based Working) の採用と、可変性を備えたレイアウトが特長です。移転後 2 か月の部署向けアンケートでは、85 % の部署が「他部署とのコミュニケーションが増えた」と回答。社員エンゲージメントの向上が確認されました。
ホテルライクなロビーラウンジと植栽の演出
エントランスはホテルのロビーをイメージしたデザインで、床・壁材や家具に高級感を持たせつつ、随所に植栽を配置して落ち着きを演出。可動式の家具・一部の植栽はイベント開催時にレイアウト変更できる仕組みです。
可変性を重視したワンフロアオフィス
旧本社で 5 フロアに分かれていた執務空間を 1 フロアに集約し、間仕切り壁を最小限にすることで視線の抜けと柔軟なレイアウト変更を両立。将来の人数・組織変化にも対応できる「8 割可変」の設計としています。
WORK AGILE による利用状況データの活用
自社開発の座席管理ツール WORK AGILE を用い、座席やブースごとの稼働状況をモニタリング。取得したデータは、今後のレイアウト最適化や用途変更の判断材料として活用されています。

引用:WORK AGILE 公式HPより
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WORK AGILE × 観葉植物――データでレイアウトを磨く使い方
座席予約システム WORK AGILE の強みは、リアルタイムの座席稼働データを蓄積できること。これを観葉植物の配置に掛け合わせると、レイアウト改善のヒントが一気に増えます。
ヒートマップを使って「置きどころ」を決める
WORK AGILE ではフロアマップがヒートマップ表示でき、稼働率が
● 80%以上=混雑ゾーン
● 40%未満=ゆとりゾーン
というようにひと目で分かります。たとえば “ゆとりゾーン” に高さ 150 cm 以上の中〜大鉢を追加すると、視線がリセットされて着席率が上がる傾向が見えやすくなります。
週次レポートで PDCA を高速回転
観葉植物を動かしたあとは、1 週間分の稼働率グラフをチェック。
例えば、「植物を 3 鉢 → 6 鉢に増やしたら、そのゾーンの利用率が向上」といった数字がとれれば、次の打ち手を社内で合意しやすくなります。
まずはスモールスタートで OK
導入フローはシンプル。
❶ ワークアジャイルへ座席図をアップロード
❷ 植物を 1〜2 か所だけ動かす
❸ 1 週間後にヒートマップを比較
効果が確かめられたら、段階的に鉢数を増やす――このサイクルを回すことで、「なんとなく置く」から 「データで最適化する」へとオフィスの緑化運用を進化させられます。
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