新型コロナウイルス感染症の影響が落ち着きを見せ、多くの企業がオフィス回帰へと舵を切り始めています。しかし、テレワークのメリットを享受してきた従業員にとって、オフィスへの完全復帰は必ずしも歓迎されるものではありません。
企業は、オフィス回帰を成功させるために、従業員の不安や不満を解消し、オフィスならではの価値を最大限に引き出す必要があります。
そこで本記事では、オフィス回帰の必要性と効果、成功事例、オフィス回帰を促すためのポイントについて解説します。これらの情報を通じて、自社のオフィス回帰戦略を立てる際の具体的なヒントを得られるでしょう。
目次
オフィス回帰の必要性が高まる理由
アメリカや日本をはじめ、世界的にオフィス出社の動きが加速しています。なぜ今、オフィスへの回帰が必要とされているのでしょうか。
オフィス回帰とは、感染症対策で導入されたテレワーク中心の働き方から、オフィス勤務中心の働き方に戻すこと、またはその日数を増やすことです。テレワークは柔軟な働き方を可能にし、多くのメリットをもたらしました。一方でコミュニケーション不足や孤独感、企業文化の希薄化などの課題も浮き彫りになりました。
オフィス回帰が求められる理由は、これらのテレワークの課題を克服し、企業の成長と従業員のエンゲージメント向上を目指すためです。そのためには、従業員が出社したくなるような魅力的なオフィス環境や柔軟かつ生産性の高い働き方をサポートする仕組みの整備が重要です。
オフィス回帰で得られる効果
オフィス回帰は、テレワーク中心の働き方では得難い多くのメリットをもたらし、企業の成長と従業員のエンゲージメント向上に貢献します。具体的には、以下のような効果が期待できます。
- ● コミュニケーションが円滑になる
- ● 社員の絆や帰属意識の強化が図れる
- ● 生産性の向上が図れる
- ● 適正なマネジメントが実行できる
これらの効果は、企業の成長と発展に不可欠です。オフィス回帰を検討中の方は、参考にしてください。
コミュニケーションが円滑になる
オフィス回帰には、対面ならではのコミュニケーションを円滑にする効果があります。
オフィスでは相手の状況が目に見えることで、気軽に質問や相談をしやすく、迅速な情報共有が可能です。リモートワークではわかりにくい表情や雰囲気などからも多くの情報を得られるため、より円滑な意思疎通が図れます。認識のズレや手戻りを防ぎ、業務のスピードアップに貢献します。
また、チームメンバーとの何気ない会話や雑談からは、新たなアイデアや解決策が生まれるものです。オフィスでのコミュニケーションは、イノベーションを生み出すきっかけとなり、組織全体の活性化にもつながります。
社員の絆や帰属意識の強化が図れる
オフィスという共有空間は、社員同士のコミュニケーションを自然に促進し、絆を深める場となります。休憩時間での交流や雑談など、オンラインでは得られない偶発的なコミュニケーションが社員間の親睦を深め、一体感を醸成します。これにより、従業員のエンゲージメントを高め、離職率の低下も期待できるでしょう。
特に新入社員にとっては、上司から直接指導を受けたり、気軽に質問できたりする環境が得られることは大きなメリットです。対面でのコミュニケーションを通じて、業務知識だけでなく、企業文化や価値観を肌で感じられます。組織への帰属意識やモチベーション向上につながり、早期の戦力化を促します。
生産性の向上が図れる
オフィスは業務に集中できる環境が整っているため、生産性向上に大きく貢献します。その理由の一つとして書類や書籍、社内システムなど、業務に必要な情報がオフィス内に集約されていることが挙げられます。
テレワークでは、必要な情報へのアクセスに時間がかかったり、セキュリティ上の制約があったりするものです。その結果、業務の停滞を招く可能性があります。
オフィスであれば必要な情報にすぐアクセスできるため、業務効率が向上し、生産性向上につながります。
適正なマネジメントが実行できる
オフィス回帰すると、社員の業務状況を直接把握できるようになるため、リアルタイムでのコミュニケーションが促進されます。
たとえば、社員の表情や様子から、業務の進捗状況や抱えている問題を察知し、迅速に対応できます。オンラインでは見逃しがちな些細な変化にも気づけるため、早期に問題解決を図り、業務の停滞を防止可能です。
また、直接対話を通じて、社員一人ひとりの能力や課題を把握し、個々に合わせた指導やアドバイスをおこなえます。オンラインでのコミュニケーションでは伝わりにくいニュアンスや意図も、対面であればしっかりと伝えられます。社員に対してより効果的な指導ができるため、成長促進やモチベーション向上にもつながるでしょう。
オフィス回帰の課題
オフィス回帰は、企業にとって多くのメリットをもたらす一方で、次のような課題も存在します。
- ● 通勤に伴うストレスがある
- ● エンゲージメントの低下を招く
- ● 会議室や席の不足
これらの課題を理解し、適切な対策を講じれば、スムーズなオフィス回帰と従業員の満足度向上が可能です。それぞれ解説するので、詳しく見ていきましょう。
通勤に伴うストレスがある
オフィス回帰により、通勤時間が発生し、従業員の負担が増加する可能性があります。満員電車での移動や交通渋滞は、身体的・精神的に大きなストレスとなるものです。そのため、集中力やモチベーションの低下につながる可能性が懸念されます。
また、通勤時間の発生は睡眠時間や家族との時間を圧迫し、ワークライフバランスの悪化を招く可能性もあります。通勤中の時間を有効活用できないことも、ストレスを増大させる一因となるでしょう。
エンゲージメントの低下を招く
テレワークに慣れた従業員にとって、オフィス回帰は自由な働き方を制限し、さまざまな負担を増やす可能性があります。
たとえば、オフィス勤務では始業・終業時間が固定され、テレワークよりもプライベートな時間を確保しにくくなります。特に、育児や介護など、家庭と仕事の両立を図る従業員にとっては大きな課題となるでしょう。
また、オフィスでの人間関係は、テレワークに比べて濃密になり、ストレスを感じる場面も増える可能性があります。苦手な同僚との接触や、煩わしい人間関係への対応は、従業員の精神的な負担を増大させます。
このような変化は従業員のモチベーションやエンゲージメント低下につながり、最悪の場合、離職につながる原因のひとつです。
会議室や席の不足
コロナ禍において、多くの企業がオフィス縮小やレイアウト変更を実施しました。しかし、オフィス回帰の流れの中で、これらの変更が新たな課題を生み出すかもしれません。
オフィススペースの縮小やフリーアドレス制の導入により、出社人数が増加した場合、十分な座席が確保できない可能性があります。従業員が快適に働ける環境を提供できなければ、集中力やモチベーションの低下につながり、生産性にも悪影響を及ぼすでしょう。
また、オンライン会議の普及により会議室の需要は減少していましたが、オフィス回帰により、対面での会議や打ち合わせの機会が増加します。会議室が不足すると、予約が取りにくくなり、業務効率の低下や従業員の不満につながる可能性があります。
オフィス回帰を成功させた事例6選
オフィス回帰を成功に導いた企業の具体的な取り組みや工夫について、以下6つの事例を通して詳しく解説していきます。
- ● 1フロアで多様なスペースを準備:森トラスト株式会社(弊社)
- ● 福利厚生施設を充実:GMOあおぞらネット銀行
- ● 設備機器を充実:法律事務所ZeLo
- ● セルフカフェルームを整備:Tech Fun
- ● フリーアドレスを導入:日清食品ホールディングス株式会社
- ● ホテリングを導入:NTTアーバンソリューションズ株式会社
1:1フロアで多様なスペースを準備:森トラスト株式会社(弊社)
森トラスト(弊社)は、2023年5月にオフィス移転を行いました。社員の目的地となるオフィス『ディスティネーションオフィス』をコンセプトに、より生産性と社員エンゲージメントを高めるオフィスを実現しました
生産性やエンゲージメントを高めるための新オフィスの特長は下記の3点です。
- ・複数フロアにまたがっていた執務空間を1フロアに集約し、間仕切り壁を減らしたことで、社員同士の交流・コラボレーションを促進。
- ・ABW(アクティビティ・ベースド・ワーキング)を採用しつつ、部署の拠りどころとしての機能をもった「BASE」を設けることで、部署内外のコミュニケーションを促進。
- ・自社開発したワークスペース管理ツール「WORK AGILE」を用いて、座席やブースの利用状況を把握・分析し、今後のレイアウト変更・用途変更などに活用。
移転後に従業員に行ったアンケートでは、
- ・85%の部署で他部署とのコミュニケーションが増加。
- ・オフィスの機能に対する満足度が向上した社員77%、出社意欲が向上した社員56%、
- ・同僚や会社とのつながり意識が向上した社員58%、自社への愛着が増した社員63%。
という結果が出ています。
参照:https://www.mori-trust.co.jp/news/2023/20230711/
2:福利厚生施設を充実:GMOあおぞらネット銀行
GMOあおぞらネット銀行は、オフィス内にカフェやマッサージルーム、仮眠室、託児所などの充実した福利厚生施設を設けました。その結果、オフィスへの出社意欲を高めることで、出社回帰の促進に成功しました。
これらの施設は従業員のリフレッシュだけでなく、コミュニケーション促進や一体感醸成にも役立ちます。カフェでの会話やマッサージでのリラックスは、従業員同士の距離を縮める工夫のひとつです。より良い人間関係を築くきっかけとなります。また、託児所は子育て中の従業員の負担を軽減し、安心して仕事に集中できる環境を提供しています。
3:設備機器を充実:法律事務所ZeLo
法律事務所ZeLoは、最新のIT機器やオンライン会議システムを導入し、効率的な業務環境を整備しました。これにより、テレワークとオフィスワークをシームレスに連携させ、生産性向上を実現しています。
また、ZeLoはオフィス回帰を単なる「出社」とは考えていません。人材育成の貴重な機会と捉え、従業員のスキルアップを支援する研修制度と最新の設備機器の活用を組み合わせています。従業員の学習意欲を高め、自己成長を促す狙いです。
4:セルフカフェルームを整備:Tech Fun
Tech Funは、オフィス内にセルフカフェルームを設置し、従業員が自由にコーヒーや軽食を楽しめるようにしました。従業員の休憩時間をより充実させ、部署や役職を超えたコミュニケーションを促進する狙いです。
セルフカフェルームは、社員同士が交流できる場として機能しています。普段接点の少ない社員同士でも、リラックスした空間の中で気軽に会話できます。このような会話からは、新たなアイデアが生まれたり、活発な情報交換がおこなわれたりすることは珍しくありません。
さらに、セルフカフェは従業員の満足度向上にも貢献しています。自由に使えるカフェスペースがあることで、オフィスでの時間がより快適になり、仕事へのモチベーション向上にもつながっています。
5:フリーアドレスを導入:日清食品ホールディングス株式会社
日清食品ホールディングス株式会社はフリーアドレス制を導入し、従業員が働く場所を自由に選べる環境を整備しました。集中したいときは静かな場所で、コミュニケーションを取りたいときはオープンスペースで働けるなど、個々のニーズに合わせた働き方が可能になりました。
また、フリーアドレス制により、さまざまな部署の社員が同じ空間で働けます。これにより、部門間のコミュニケーションが促進され、新たなコラボレーションやイノベーション創出につながることが期待されます。
6:ホテリングを導入:NTTアーバンソリューションズ株式会社
NTTアーバンソリューションズ株式会社は、ホテリングシステムを導入し、従業員が出社時に座席を予約する仕組みを導入しました。
従業員は自分の仕事内容や気分に合わせて、最適な座席の選択が可能です。集中したいときは個室ブース、チームで議論したいときはオープンスペースなど、多様な働き方をサポートする環境が整っています。この自由度の高い働き方が、従業員の満足度向上につながっているのです。
さらに、ホテリングシステムの導入は無駄なスペースを削減し、オフィスの効率的な運用にも貢献しています。
オフィス回帰を促すためのポイント3つ
オフィス回帰を成功させるためには、従業員のニーズを満たし、オフィスならではの価値を提供できる環境づくりが重要です。そのためには、以下3つのポイントを押さえる必要があります。
- ● メリハリを付けたオープンなフロア設計にする
- ● 快適なリフレッシュルームを併設する
- ● スペースを自由に選べるフリーアドレスを導入する
従業員が「出社したい」と思えるような魅力的なオフィス空間を創造し、出社回帰を成功させましょう。
メリハリを付けたオープンなフロア設計にする
従来のオフィスは、個々のデスクが仕切られた閉鎖的な空間になりがちでした。しかし、オフィス回帰を促すには、偶発的な出会いを生み出すような、開放的でメリハリのあるフロア設計が必要です。
具体的には、集中作業に適した個別ブースや、チームでの活発な議論を促すオープンスペースなどをバランスよく配置します。従業員は業務内容や気分に合わせて最適な場所を選択できるため、生産性向上につながります。
このような多様な空間は偶発的な出会いや活発な意見交換を促し、イノベーション創出にも貢献するでしょう。
快適なリフレッシュルームを併設する
オフィスでの長時間勤務は、身体的・精神的な疲労をもたらす可能性があります。そこで、従業員が心身のリフレッシュを図れるような、快適なリフレッシュルームを併設するのがオススメです。
カフェスペースやマッサージチェアなどを設けることで、従業員の満足度を高め、出社意欲を高める効果が期待できます。また、リフレッシュルームは従業員同士のコミュニケーションを促進する場としても有効です。リラックスした雰囲気の中で、部署や役職を超えた交流が生まれ、新たな発想や協働を生み出すきっかけになるかもしれません。
スペースを自由に選べるフリーアドレスを導入する
フリーアドレス制の導入は従業員の主体性と創造性を刺激し、オフィス回帰を促進するための有効な手段です。
集中したいときは静かな場所、コミュニケーションを取りたいときはオープンスペースなど、業務や気分に合わせて最適な場所を選べる柔軟な働き方を提供します。これにより、従業員は自らのパフォーマンスを最大限に引き出せ、生産性向上にもつながります。
さらに、他部署の社員が同じ空間で働くことで、偶発的な出会いや情報交換が生まれ、新たなコラボレーション創出のきっかけにもなるでしょう。従来の固定席制では生まれなかった、自由な発想や活気あふれる職場環境を実現できるのも、フリーアドレス制の魅力です。
WORK AGILEの座席管理ツールは、従業員がそのときの状況に合わせて最適な場所を予約できるようサポートします。オフィス回帰を成功に導けるよう、WORK AGILEをぜひお試しください。
「WORKAGILE」なら低コストでオフィス回帰の促進が可能
引用元:WORK AGILE公式HP
オフィス回帰を検討する企業やフリーアドレスを導入する企業にとって、コストは大きな課題です。しかし「WORK AGILE」を活用すれば、低コストで効率的かつ効果的なオフィス回帰を実現できます。
WORK AGILEは、低コストなクラウドベースの座席予約システムです。従業員の座席利用状況をリアルタイムで把握し、オフィススペースの最適な活用を支援します。フリーアドレス制やハイブリッドワークなど、多様な働き方に対応できる柔軟な機能も充実しており、従業員の満足度向上と生産性向上にも有効です。
さらに、WORK AGILEは従業員同士のコミュニケーション促進や、会議室予約の効率化など、オフィス回帰に伴うさまざまな課題解決にも役立ちます。直感的な操作性と豊富な機能で、従業員と管理者の双方にとって快適なオフィス運用を実現できます。
まとめ
オフィス回帰は、テレワークだけでは得られないメリットが多く、企業の成長や従業員のエンゲージメント向上に不可欠です。コミュニケーションの活性化、企業文化の醸成、生産性向上、人材育成など、オフィスという場が持つ力は、ニューノーマル時代においても重要な役割を果たします。
一方で、オフィス回帰には、通勤ストレスやエンゲージメント低下、スペース不足などの課題も存在します。これらの課題を克服してオフィス回帰を成功させるためには、従業員の意見を積極的に聞き取り、柔軟な働き方や快適なオフィス環境の提供が重要です。
メリハリのあるフロア設計、快適なリフレッシュルームの設置、フリーアドレス制の導入など、オフィス環境の改善もオフィス回帰を促進するための有効な手段となります。
企業はテレワークのメリットも活かしつつ、オフィス回帰を戦略的に進めることで、さらなる成長と発展を目指していくことが重要です。